「――よう」
 「あ、会長。おはようございます」
 「こんなところで会うなんて奇遇だな」
 「そうですね。…会長でも電車で通学なんてするんですね」
 「まあ、たまにはな。こういうのも悪かねえ」
 「ところで会長」
 「あん?」
 「ここ、女性専用車両ですよ」










 「――また会いましたね、会長」
 「同じ所に向かってたんだからそりゃ玄関でくらい会うだろ」
 「それもそうなんですけど、途中で一度見失ってしまったので」
 「見失った?」
 「はい。後ろの方でずっと会長を見ながら歩いてたんですけど、会長ってば歩くの早いから」
 「……ずっと後ろに居たのか」
 「はい。凄く会長が気になっちゃって」
 「ほう……どういうことだ?」
 「だって会長、駅からずっと鞄の口がぱかって開いてるんですもん。――勿論今も」










 「……何だその花束は」
 「あ、会長。偶然ですね。これ、友達がくれたんです。私、こういうの凄く好きなので」
 「ローズか」
 「はい。会長は好きですか?」
 「ああ、そうだな。花の中じゃ特に好きだ。――良い香りだな」
 「これ造花です」
 「……………良いよな、造花。枯れねえし」
 「はい、ずっと綺麗なままなので好きです」










 「会長。次の生徒会選挙の立候補者のリストと資料です。
  会長の後任も決めるんですから、ちゃんと読んでくださいね」
 「ああ。……もうそんな時期になるか」
 「あっという間でしたね。……あの、会長」
 「何だ?」
 「あの……その、言おうか言わないか、凄く迷ったんですけど……えっと………」
 「どうした?らしくねえ物言いだな。……顔が赤いぞ?」
 「さ、さすがの私も、こんなこと初めてなので、戸惑うというか…どう言ったら良いかわからなくて……。
  今朝からずっと、玄関で会ったときも廊下で会ったときも、言おう言おうって思っていたんですけど、
  でも言えなくて、また言えなかった、って後悔しちゃって……。
  言えないまま、会長はいまどうしてるんだろうって考えたら授業になんかとても集中できなくて。
  …でも、ちゃんと言わなくちゃいけないことなんです」

 「そうか………嬉しいぜ、お前の気持ちは」
 「あ……そう言って頂けると、私も言い易いです。…って、あれ、私が言いたいこと、もうわかって…?」
 「ああ。…だがちゃんと、お前の口から聞かせろ」
 「え………か、会長って、やっぱりただ者じゃないですね……」
 「こら、どういう意味だ?」
 「言葉のままです……」
 「ほら、早く聞かせろ」
 「は、はい………か、会長!」
 「ああ、何だ?」
 「実は―――――…………」













 「――なー侑士。なんか跡部の様子おかしくね?」
 「あぁ……何でも、さっき好きな嬢ちゃんにチャックが全開なんを指摘されたらしいで」
 「何だそりゃ………」