「(冗談じゃない、冗談じゃない、冗談じゃない―――!!)」
夕暮れの商店街を、わたしは駆け抜けた。息が切れる。買ったばかりのまだ慣れないローファーの中で、足が軋む。
いつもは花束を抱えてゆっくり歩く道を、わたしはスクールバッグだけを抱えて走り抜けた。
ひどい話だ。あんまりだ。
いつもお姉ちゃんに花を買っていった。それが、“あの人”の家のだったなんて。よりにもよって?
無知は恥だ。愚かだ。どうしてわたしはいつもこうなんだ。
目的地のすぐ近くまで来て、わたしは足を止め息を整え、じんわりと滲んでいた涙を拭った。
手櫛で軽く髪も直して、鞄を肩にかけ直す。
一呼吸おいて、わたしはゆっくりと歩き出した。西日が眩しかった。
「――お姉ちゃん、ごめん。今日はお花ないんだ。明日また来るから、怒らないでよね?」
彼女はただ、穏やかに笑む。
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